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急速凍結レプリカ法

実験の流れ

レプリカ説明.png

急速凍結レプリカ法の原理と歴史

急速凍結レプリカ法の原理

急速凍結レプリカ法は、主に以下のステップから成り立っています。

  1. 急速凍結(Vitrification)(Link):

    • 液体ヘリウムで冷却した銅ブロックに生体試料を接触させることで非常に速い速度(約10,000℃/秒以上)で冷却します。(メタルコンタクト法)

    • この急速冷却によって、試料中の水分子が結晶化(氷晶形成)するのを防ぎ、ガラス状の非晶質の氷(vitreous ice)の状態に固めます。氷晶が形成されると、その結晶が細胞構造を破壊してしまうため、このステップが最も重要です。

    • ほかの冷却方法としては、液体エタンなどの低温液体に試料を浸漬する方法や、高圧をかけながら凍結する方法(加圧凍結法)などがあります。

  2. 凍結割断(Freeze-fracture)(Link, Link):

    • 急速凍結された試料を高真空下、低温環境(-150℃前後)に置きます。

    • 冷却したナイフで試料を割断します。このとき、細胞膜は剥離する性質があります。これにより、細胞膜の表面が露出します。割断された断面や、膜の裏打ち構造なども露出します。

    • 露出した細胞膜の表面には、膜タンパク質などの構造が粒状に現れます。

  3. レプリカ作製(Replication)(Link):

    • 割断された試料の表面に、プラチナ(Pt)や炭素(C)を真空蒸着させます。

    • まずプラチナを斜めから蒸着させることで、表面の凹凸に影(シャドウ)をつけ、立体感のあるレプリカを作ります。次に、炭素を垂直に蒸着させ、レプリカの補強膜とします。

    • その後、試料本体を化学的に溶かして取り除き、プラチナと炭素でできた薄い膜(レプリカ膜)だけを残します。

  4. 電子顕微鏡観察(Observation):

    • 作製されたレプリカ膜を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察します。

    • レプリカ膜には、元の試料表面の凹凸が写し取られており、プラチナの影によって、細胞膜上のタンパク質粒子やその他の微細構造を立体的に、かつナノメートルレベルで解析することができます。

 

この方法は、生きた状態に近い細胞の膜構造を詳細に観察できるため、細胞生物学や病理学の分野で現在でも重要な技術となっています。

急速凍結レプリカ法の歴史

急速凍結レプリカ法は、生物試料の微細構造を電子顕微鏡で観察するための技術として発展してきました。その歴史は、1960年代に遡ります。

  • 1960年代:Van HarreveldとCrowellらによって、液体窒素で冷却された金属ブロックに生物試料を叩きつける方法が開発されました。しかし、当時の技術では凍結後の処理や、試料自体の問題から、その後の発展は限定的でした。

  • 1970年代以降:凍結技術の進歩に伴い、急速凍結法は改良されていきました。特に、細胞内の微細構造を壊さずに観察する手法として、様々な研究者によって独自の技術が開発されました。凍結した試料を割断する「凍結割断法」が確立され、細胞膜の内部構造を解析する唯一の方法として盛んに利用されるようになりました。

  • ​その後、細胞接着因子、神経内部の分子モーター、細胞膜脂質構造など多くの研究で用いられました。

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